学びの多様性の目的は、複数の視点を得て、事物や真理を立体的に理解するためです。
例えば、問題となっている事物が正方形に見えたとします。しかしそれは、一面だけの事実で、
ある角度から観たら、六角形に見えます。また他の角度から観たら、違った形に見えます。
様々な視点から見た形を繋げて、「これが、立方体」と、
理解すると、運動体としての立方体の理解が進みます。
「立方体が回転したりするとこんな形に見えるんだ。」
「展開図にしたら、こうだよ。」など、
一面だけをみて理解するより、立体的かつ運動体としてのダイナミクスな理解が進みます。
これを豊かな学びと言います。
このような多様な視点からの学びには、特徴があります。
多様に視点を動かすために、言葉を生み出していくことです。
決して難しい言葉ではありません。
主にキーワードから同義語、類義語や対義語、更には比喩など多様に使い、視点を動かして、
多様な視点からのアプローチを可能にしていくことです。
それでは、4年生の面積で学習する「たて×よこ」を、
どのようにして多様な学びにすることができるのでしょうか。
図1は、たてが3個、横が5個で3×5=15となります。2年生来のものの数え方としては、
たて何個、よこ何個で数える事は自然です。それがこのようなシェーマでも使われます。
すぐにたては3㎝、よこ5㎝と長さを持ち出すのは禁物です。
図2では、そのタイルを階段に見立て、ずらしました。
すると、たてという言葉は階段では使いません。
何という言葉が最適でしょうかと問えば「段」と即座に答えが返ってくるでしょう。
すると一段当たり5個のものが3段という表現になります。
「たて」から階段に見立て、高さを意味する段という言葉を見出しました。
再び図1に戻ります。これをビルに見立てます。
するとやっぱり「ビルのたて」は、とは言いません。
建物の高さを表す言葉として「3階」という言葉を見出すでしょう。
このようなたぐいのことを、こども達と共にハンズオンで学びながら
「たて・よこ」の親戚言葉として高さを表す言葉を生み出したり、
あるいは他の見立てを使えば「幅」を意味する言葉にも膨らませることができるでしょう。
このような見方や表現の多様性は、具体的な言葉とつながっていきます。
それは柔軟な思考を促進していくことでしょう。
また5年生以降になって、本格化する面積の世界への見方の素地を形成していきます。